-中国語あれこれ
--鄭老師の漫談--
(6)倍返しだ!“加倍奉
 先日、日本の大新聞に流行語大賞を取った「半沢直樹」が再び大きく取り上げられた。新味は何かと思ったら、この人気ドラマを中国の国営テレビ(CCTV)が放映を検討している、と。すでに、中国でも動画サイトに載って広く流布している「半沢直樹= Ban ze -zhi shu」の知名度はたしかに高い。これが、国営メディアのルートで全国放映されたら、影響は絶大。ぜひ、実現してほしいものです。これによって、目下の「政冷経涼」の両国関係に文化面から暖気を送り込み、寒さにかじかんだ民間交流を活発化させるキッカケになれば、と期待しているところです。

 半沢直樹の決め台詞は「やられたらやり返す、倍返しだ!」ですが、中国語訳は“人若犯我,我必加倍奉
ren ruo fan wo, wo bi jia bei feng huan(相手が侵してくれば、こちらも必ず倍の仕返しをする)とか、“以牙牙,加倍奉yi ya huan ya,jia bei feng huan(歯には歯を、倍返しだ!)となっています。さて、少し言葉の学習に入りましょう。ここの“奉feng huanはもともと「(借りた物などを)謹んでお返し致します」という敬語ですが、=還”には「返還する」とは別に、「仕返しする・復讐する」という用法があるので、直訳すると、「謹んでやられた倍を仕返しする所存だ」となる。

 なぜ、仕返しする相手に対して、敬語などを使うのか?そんな疑問を持つ読者がいるかもしれない。ただでさえ憎い仇や「加害者」に対して、なお礼儀をわきまえて尊敬語を使うあたりは、一見すると、紳士や大人の風格を思わせるが、実はそうではありません。わざわざ敬語を使うのは、とても尊敬などには値しない下劣な相手に対する痛烈な皮肉なのです。中国語独特の凄味を利かせた「正義の反撃宣言」だともいえる。そんな荘厳な語感を持つ中国語に対し、日本語の「やられたらやり返す、倍返しだ」という言い方はやや俗っぽい。対比すると、雰囲気がかなり異なる。ここはやはり国民性や文化の差異なんだろうと思います。


 類似した言い回しに“奉陪 fengpei(ご一緒する・お供する)などがある。例文を挙げておく。“他不是想欺
?好!我愿意‘奉陪’到底 Ta bu shi xiang qi fu wo ma? Hao! Wo yuan yi feng pei dao di(あの人は私を虐めようとしているではありませんか!よーし、それなら、トコトンお付き合い願おうじゃありませんか)”。

 仕返しや復讐に関連する中国語では、“卧薪
wo xin chang dan(臥薪嘗胆)”がよく知られていますが、“公私仇 gong bao si chou(公務に乗じて私怨を晴らす)”とか、“君子仇,十年不晚 Jun zi bao chou,shi nian bu wan(君子たるもの、恨みを晴らすのに性急になることはない、気長にじっくりと時機を待つがよい。ほかに転義として、「事を成すには忍耐が重要だ」との意味も)などがある。人生訓として使われている“君子仇,十年不晚”は、ユーモアを交えて“君子仇,十年不晚;小人仇,一天到晚 xiao ren bao chou,yi tian dao wanと対句にして使う人もいる。「小人物の仕返しは、朝から晩までネチネチとキリがない」というわけです。

 この人気ドラマには、いろんな決め台詞が登場するが、その中のいくつかを取り上げてみましょう。「部下の手柄は上司のもの」は“部下的功
被上司据己有 bu xia de gong lao bei shang si ju wei ji you ※据己有=占有し我が物とする”,「上司の失敗は部下の責任」は“上司的过错罪于部下 shang si de guo cuo que gui zui yu bu xia罪于〜誰それに罪を着せる”と訳せましょう。でも、こんな道徳観の逆立ちした社会なんて、御免蒙りたいですね。(次回につづく)