-中国語あれこれ
--鄭老師の漫談--
(48)中国語会話 中級プレミアム・レッスン
【 忠告の表現 (3) 】
你这是何苦呢?/我是怕你闹到最后鸡飞蛋打。


Ⅰ.利害得失を説く忠告

“趋利避害qū-lì bì-hài;(害を避け、利に走る)”は、普通の人間によくある行動パターンです。このツボをピタッと押さえた忠告の仕方が、中国人社会でも日常的に多く聞かれるのはごく自然の成り行きだと思います。たしかに事の利害得失を説く忠言は相手に受け入れられ易く、したがって忠告の目的を達成し易い;忠告を無視すると、被害を蒙るかもしれないし、或いは逆に得られるべき利益が得られなくなるかもしれないとの人間心理が働く。
では次に、利害得失に関して、中国人が普段よく用いる忠告フレーズを見てみましょう。

1. 记住我这句话对你有好处。
2. 机会就摆在了你的面前,请勿失良机。
3. 你不必再费心费力了。
4. 这对你没什么好处。
5. 你要离他远点儿。
6. 我是怕你闹到最后鸡飞蛋打。
7. 你别给自己找麻烦。
8. 你这是何苦呢?  
9. 你软弱就挨打受气。
10. 你得给自己留条后路。
11. 好汉不吃眼前亏。


★語注;
好处 hǎo-chu;名詞・利点/利益●勿 wù;副詞・…するべからず(文章語)●闹 nào;動詞・トラブルが起きる/ごたごたする/もめる●鸡飞蛋打 jī-fēi dàn-dǎ;諺・鶏は飛んで逃げ、卵は割れる/元も子もない●找麻烦 zhǎo má-fan;動詞句・面倒を起こす/厄介事を招く●何苦hé-kǔ;副詞・なぜわざわざ…するのか/ことさら…することもあるまい●挨打受气 ái-dǎ shòu-qì;動詞句・暴力や虐めに遭う/叩かれたり、いじめられたりする●留后路 liú hòu-lù;動詞句・逃げ道を用意する/退路を残しておく●眼前亏 yǎn-qián-kuī;名詞句・分かりきった損失/誰の目にも予知できる損失。“吃亏chī-kuī;損をする/ひどい目に遭う”(※第2話“吃鸭蛋”参照)

★解説;
●例文1「私のこの言葉を覚えておくと得ですよ」という忠告。

●例文2は「チャンスはまさに目の前に転がっている、この良い機会を逃してはなりません」。

●例文3は「あなたはもう気を遣うことも骨を折ることも必要ではありませんよ」。必要のない気遣いは気苦労の空回り;必要のない骨折りは無駄骨、だから損することはやめよう」。

●例文4は「このことはあなたにとって何の利益もありません」。

●例文5は「彼に近づかないようにしなさい」。つまり「彼は要注意人物(危険人物)なので、あなたのためになりません。関係を持たないように気をつけなさい」。

●例文6は「ごたごたもめた挙句に、元も子も失うことになるあなたがとても心配なんです」。財テクの目的で預金したのに、元金も利息もいっぺんに失うのは、誰にとっても耐え難く、容認できるはずはない、と分かり易い例え話“鸡飞蛋打”を引き合いに出し、だったら、今のうちにもめ事から身を引くべきです、という論法。“
=ニワトリ”が「元金」で、“=たまご”が「利息」というわけです。

●例文7は「要らぬ面倒を起こさないことです/自分から厄介事を招かないことです」。“
人生苦短,知足常乐 Rén-shēng kǔ-duǎn,zhī-zú cháng lè;人生は短く、つらいものだが、足るを知れば常に幸福でいられる”との人生観に立てば、悩みのタネになるような面倒事や厄介事を自分から招くのは、ただでさえ苦しみの多い人生にとって愚かしいことだし、損なことだという趣旨の忠告。

●例文8は反語文(※第33話参照)「あなたのそうした行為は自ら悩みのタネを作るようもので、全く無意味ですよ」。“
何苦何必自寻苦恼 hé-kǔ·hé-bì zì xún kǔ-nǎo;自分から悩みのタネを作る必要などあるでしょうか?そんな必要は全くない/そうするのはまったく無意味だし、損だ”。

●例文9は「弱虫だと虐められてしまう」。

●例文10は、「人は言動において、失敗を防ぐために、あるいは損失を招かないようにするために、前もって『逃げる余地』を作っておくべきだ、そうしないとあとで損をするよ」という忠告。その一方で、“
不留后路才有出路 Bù liú hòu-lù cái yǒu chū-lù (退路を作るべきではない、そうしてこそはじめて前進・発展の道が開かれる/逃げ道を作る限り、活路はない)”「捨て身の覚悟を固めてこそ、活路が開かれる」との忠告もある。

●例文11は、「立派な男(賢い人)はみすみす損はしないものだ」。“
君子不立危墙之下 Jūn-zǐ bú lì wēi-qiáng zhī xià(君子危うきに近寄らず)”。

以上の各例文の中で、“
良机”、“出路”、“留后路”、“有好处”などは明るい未来の展望を示していますが、一方において“鸡飞蛋打”、“挨打受气”、“危墙”、“眼前亏”、“何苦”、“费心费力”、“找麻烦”、“没好处”などは暗い未来の結末を予告しています。こうした具体性に富んだ言葉を用いて、相手に事の損得を巧みに説く。この点に中国的特色があるといえましょう。想像を掻き立てるこうした直観的な言葉は、確かに聞く人に強くアピールする力を持っています。

特に例文9“
你软弱就挨打受气”や、“你落后就挨打 Nǐ luò-hòu jiù ái-dǎ;(落伍者は叩かれる)”は、中国人にとって理屈抜きにぴんと来る警句です。それは近代以来の民族的苦難と屈辱の歴史体験に由来しているに違いありません。

不老長寿を願う中国人は、死ぬことを婉曲に“
百年之后 bǎi-nián zhī-hòu(寿命の終了)”と言い、長い目で人材養成することを“百年树人 bǎi-nián shù-rén”と言う。また“百年大计 bǎi-nián dà-jì(百年の大計)”が示すように、物事を100年或いはそれ以上の長いスパンで構想する傾向があります。中国とはそういう国柄であり、そういう国民性を持つといえましょう。

現在の中国においても、国家と社会の壮大な夢を描き出し、50年後、100年後の夢の未来像について多くを語ろうとする中国人ではありますが、その一方において、当面する個々の現実の問題の解決に当っては、例文にも見られるように、利にさとく、とても現実的で計算高いスタンスを持ち合わせている、といえましょう。

(次回に続く)