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(3)「△包 bao---△△虫 chong??」 |
相手に対して、感情がむき出しの時に発する言葉には、その人の関心事、着眼点、発想、本音、さらには国民性、民族性までもがパッと顔を見せたりする。そんな視点から、現代中国語口語の中のわりとポピュラーな皮肉言葉、相手を卑しめる言葉を集めてみました。こうするのは、あくまでも学習のためであって、他意はありません。狙いは中国語の中の言語文化を少し探ってみたいからです。但し、その種の言葉は、往々にして善悪両面およびグレーゾーンを持つ人間の多面性・複雑性を無視しがちです。ある面のみを切り取っているため、決め付けるような言い方になることが多く、切り口がすこぶる鋭い。“有压迫就有反抗you
yapo jiu you fankang(圧迫のあるところには反抗がある)”、つまり、「やられたら、やり返す」のは世の常、言われた相手から猛烈に反論される場合もありえます。使う場合は、反論される覚悟をしておいたほうがよさそうですね。 では、まず“包bao”から取り上げます。 病包 bingbao 泪包 leibao 淘气包 taoqibao 汗包 hanbao 草包 caobao 熊包 xiongbao これらの単語は、別にいろんな饅頭の種類を言っているのではありません。この“△…包”は面白い用語なんです。たしかに“包”は、“书包 shubao(学生鞄)”“手提包 shoutibao(手提げバッグ)”のように、名詞用法としては「包み」、「バッグ」の意味がありますね。そこで、質問!人体とはどんなもの?答は---全身を覆う皮膚がまるで一つの袋となって、中の肉・内臓・骨をまとめて包み込んだ一種の「包み」だ、という面白い発想です。中国人の伝統的な肉体観と言えそうです。あくまでも外皮と中身の関係に着目し、中身はいったい何なのかに関心を注ぎ、重要視する。例えば、“那个家伙是个套着人皮的野兽 Nage jiahuo shi ge taozhe renpi de yeshou (奴は人間の皮をかぶったケダモノだ)”という言い方からもわかるように、表面は人間の皮で包まれているが、肝心の中身はケダモノだと、論難するスタイルをとっている。 もうお分かりだと思いますが、念のため、よく使われる“△…包”の上記の具体例を少し説明します。包みの中身が病気だらけの人は“病包”、体内に“泪=涙”をいっぱいに溜め込んでよく泣く人は“泪包”。「いたずら(淘气 taoqi)盛りの子供」は“淘气包”、汗かきの人は“汗包”。また普通、袋の中が稲や麦のわらで詰まっているものは“草包”というが、それが転じて「役立たず」「意気地なし」の喩えとして使われる。なぜでしょうか?正解は人体の中身が取るにならない「わら」ばかりでは、役に立たない「わら人形」というわけです。 ![]() 次に中国で熊といえば、国宝級のあのジャイアントパンダ“大熊猫 da xiongmao”をまず連想しがちですが、全土に広く分布し、棲息しているのはむしろ“狗熊 gouxiong(ツキノワグマ)”のほうです。ただ中国人は“狗熊”に対しマイナス・イメージを持つ。不格好で臆病者だと。山中の熊は、人間の大きな話し声や歌声、楽器の音などを聞くと、怖れをなして逃げ出して行くからだ。だから、意気地のない軟弱な人を“熊包 xiongbao”というわけです。表面は人間の皮であっても、中身は弱気の熊さん、というわけです。 次に第2類として“虫 chong”の話に入ります。 瞌睡虫 keshui chong 应声虫 yingsheng chong 懒虫 lan chong 可怜虫 kelian chong 糊涂虫 hutu chong、さて、一体どんな虫? “△△虫 chong”というのは、人を皮肉、冗談や軽蔑の気持ちから言う「…な奴」という感じの言葉です。おおかたの中国人が虫を毛嫌いするのは、虫が暮らしに害を及ぼすからです。農作物を食い荒らす“蝗虫 huangchong(イナゴ)”またの名を“蚂蚱 mazha”がその最たるもの。 ![]() じつは、中国語の“虫=蟲”は、古代ではなんと、「人類を含む動物全般の通称」だったのです!その伝統の延長線上でヒトを「△△蟲」と呼べるわけです。決して人間さまを「虫けら」扱いしているわけではありませんよ(笑)。さて、日常よく使われるものに、瞌睡虫=居眠り屋、应声虫=イエスマン、懒虫=ぐうたら、可怜虫=哀れな奴、糊涂虫=間抜け・愚か者などがあります。(次回に続く) |