-中国語あれこれ
--鄭老師の漫談--
(15)オレオレ詐欺=“我我诈骗・是我诈骗・我来诈骗・我咧我咧诈骗
“你猜猜我是オレが誰だかわかる?当ててみな)
 日が長くなり、夕暮れの訪れも遅くなってきた今日この頃である。春暖に誘われて、自宅最寄り駅のふた駅手前で下車し、歩いて帰宅することが多くなった。休日には朝から自宅近くの自然公園に出掛けて散策することにしている。動機は健康維持のためですが、散歩の楽しみもある。道すがら見知らぬ景色が目に触れるのは新鮮な刺激であり、脳の活性化にもよいと思っている。いろいろと散歩コースを変えると、道路や街の姿も変わって見え、飽きが来ない。その際、随所によく見かけるのが各町内自治会の掲示板です。どんな暮らしの情報が出ているのかと、いつも興味を抱いて覗いてゆくことにしている。

 最近の掲示板をみると、どこでもセンセーショナルなポスターが1枚貼ってある。遠くからでも目立つほど「息子はサギ?」と大きな活字が躍っているのだ。情報週刊誌顔負けのこのタイトルの横には、やや小さな見出しで「電話でお金を要求する(息子はサギ?)」と書かれている。なんと、オレオレ詐欺の注意ポスターではありませんか!それにしても、「息子はサギ?」とは表現がどぎつくて、ショッキングだ。世の中には無数の「息子」が存在するが、みな「電話でお金を要求する」という条件付で、サギの嫌疑をかけられていることになる。なので、世の息子たちはこのポスターを無視できないし、世のオレオレ詐欺にも無関心ではいられない。このポスターの狙う効果はテキメンだと言えそうだ。では、世の息子たちは、自分がサギでないことを立証するために、何をなすべきか?

 第一になすべきことは、親には決して電話でお金を要求しないこと、第二として、世にはびこるサギの「真犯人」を追い詰めるために、市民として果たすべき義務を果たすことだと、自分なりの答えが浮かんできた。

 「母さん、オレだよ、オレ!(
!我,是我啊!)」が手口のオレオレ詐欺。このネーミングは、俗っぽいが、言葉の面白味に富んでインパクトがあり、一度聞いたら忘れられない点が優れている。別名は「振り込め詐欺」ですが、最近は犯罪手口の主流がATM型から手渡し型に変わっているので、必ずしも「振り込め詐欺」とは言えなくなっている。被害総額も年間100億円を超えており、これはもはや由々しき社会問題だ。防犯標語コンクールの作品をみると、オレオレ詐欺のほかに、「母さん助けて詐欺」・「ニセ電話詐欺」・「親心利用詐欺」などが優れた命名として選ばれている。ところで、日本の電話詐欺事件で被害が一番際立つのは、息子や孫を装う手口に騙される独居老人が多いことだが、社会的弱者というべきその独居老人世帯の金銭財貨を掠め取るために、家族愛や肉親の情につけ込むとはまさに言語道断であり、私欲のために親子間の大切な人倫道徳を「人質」に取って他人の財貨を騙し取るとは、まことに悪質かつ卑劣極まりない。

 実際、中国でもこの種の電話電信詐欺が多発している。ただ、詐欺犯が成りすますのは、被害者の「子」や「孫」よりも、むしろ多くの場合、被害者の「友人」・「学生時代の同級生」・「親戚」などである。この点で日本とはかなり情況が異なる。原因は社会人になってからお金に困った時、友人や親戚に頼る社会習慣が依然として中国社会に根を張っているからです。中国の諺に“在家靠父母,出外靠朋友”とあるくらいです。

 では、中国における典型的な詐欺犯と被害者の電話のやりとりを一例として再現してみると、おおよそ次の通りになる。
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 犯人“你猜猜我是私が誰だかわかる?当ててみな)

 被害者我真的想不起来啊(いやー、どなただか、ほんとに思い出せませんねぇ)

 犯人我你都听不出来了?你我都忘了,那就算了!(なに!この私の声に聞き覚えがないですって、そりゃひどいよ。ほかの人ならいざ知らず、この私を忘れるなんてひど過ぎる!それなら、もういい。この電話はなかったことにするだけさと言って電話を切る。

 ところが、そこでもし、犯人の誘導尋問に不意を衝かれて慌てた被害者が、錯覚を起こして、ある人を思い出そうものなら、犯人のペースにハマッてしまう。

 被害者“哦!我想起来了!你是某某(あーあ、思い出した!誰々さんですね!)”
---(すると、犯人は相手の話に合わせて、誰々さんに成りすます)---

 犯人“是呀,你于想起来了。我以你把我忘了呢!(その通りさ、やっと思い出してくれたんだね、もう私のことなんか、スッカリ忘れたのかと思いましたよ)”
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 犯人はこのあと、旧交を温めるため、近日中に被害者に会いに行くとウソをつき、数日後に再び被害者に電話を入れる。「じつは、いまそちらへ向かう途中、うっかり持ち金を落としてしまって困っているんだ。お金を貸してちょうだい。私の口座を教えますので、すぐに振り込んできてくれます?」と犯行に及ぶ。借金の口実としては、このほかに交通事故を起こし、怪我させた相手に払うカネがすぐ必要になったとか、中には悪漢に誘拐されてしまい、身代金が必要だなどとうそぶく者もいる。

 一方、日本と中国にまたがる電話詐欺事件も起きている。昨年6月、中国広東省珠海市内の某アパートで起きたある殺人事件から、日本人電話詐欺グループの存在が発覚したことが大きな話題となった。殺人事件は仲間割れによるリンチの結果だと判明したが、中国の人々が驚かされたのはむしろ別の側面です。この犯罪グループが中国の都市に潜入してアパートを拠点にし、日本の銀行員や警察官を装い、日本国内に偽電話を掛けて振り込め詐欺を働く手口が明るみに出たからだ。これは警察庁の厳しい取締りを逃れて、詐欺犯罪集団が海外に拠点を移している表れだという。他方において、中国からも日本に詐欺グループが潜入し、この種の犯罪に手を染めていると報道されている。

 経済グローバル化の波に乗って、刑事犯罪の国際化・知能化・複雑化の様相が拡大、深化している。したがって、司法警察当局同士の緊密な連携協力が欠かせなくなっている。“天网恢恢,疏而不漏(天網は広大にして疎であるが、罪悪を討ち漏らすことはない)”と言うが、東アジア地域全体を覆う天網をまずしっかりと構築しなければなりません。しかし、実効性のある協力互恵関係は相互信頼の強固な基礎がないと成り立たない。国際犯罪の抑止と低減のためにも、中国と日本の政府間関係の修復は強く期待されていると思います。(次回へ続く)